松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

三部作読了

「燃えあがる緑の木」を読み終えた。

大江さんの小説の登場人物たちは、

揃いも揃ってインテリで、

さまざまな本からの引用をネタに、

語り合うわけだ。

教養不足の私は、いつも置いてけぼりだ。

しかし今回は、イェーツや、

シモーヌヴェーユなどの言葉に、

ごく自然に惹かれるものがあった。

虚無の底に長くいるせいか、

これは、あのことを言ってるのではないかと、

現実に引き付けて思い当たるような事が、

さまざまあった。

年齢というよりも、自分の状態と、

タイミングがあったのかもしれない。

著者は自分のいろんな小説の中に、

小説家のkとしてたびたび登場する。

その書きっぷりは情け容赦なく、

そこそこ自虐的である。

それでクッツェーのことを思い出した。

タイトルは忘れたけど、

クッツェーの評伝を書こうとしている人物が、

彼と関わりのあった(本人は死んでる設定)

6人くらいの人と会い、

インタビューするという形式の小説。

これも、哀れに情けない男の一面を、

微に入り細に渡って赤裸々に語らせ、

なかなか自虐的で笑える。

ノーベル賞をとったこの二人の作家は、

揃って自己処罰の意図があるのか?

確かに自分には罰せられるべき罪があると言う、

意識を持っているようには感じられるが。

この厳しさを思うと、

私は自分を甘やかしすぎだなと、笑。

私は自分の出てくる小説は書かないけど、

その事は心に止めてもいいかもしれない。