松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「供述」について

ペレイラの「供述」という文体は、

タブッキの発明だとばかり思っていたが、
実は先例があったかもだ。
たまたま読んだシチリアの短編の中に、
フェデリーコ・デ・ロベルトという人の、
作品が出てくる。
この本に翻訳されているのは、
「ロザリオ」という作品で、
本の最初の一編である。
これがなかなか強烈で、
私はハナからビックリしてしまった。
これは後書きによると「調書」(1890年)
という本で、発表されたもので、
その表題作は、
まさに裁判記録のような形、
著者の見解を交えず、
会話とト書で構成されたものであるらしい。
タブッキはこれを、
読んでいた可能性は高いと思う。
だから駄目だとは全然言ったなくて、笑、
ペレイラは実に素晴らしく面白く、
よくできた小説である。
最後の最後にペレイラが新聞にねじ込んだ、
署名記事は、ごく短いが、
なんかちょっと感動してしまう。
これは、白水社の新書版でも、
出ていたはずなので、
買おうかなとさえ思っている。
そうすれば何度も読めるし。