ブーヴィエもロバが好きだった!
解説では、すべての著作からの引用によって、
ブーヴィエにとって重要だった事が、
いくつかでてくるが、
その最初の見出しは、〈内なる自由〉。
「私にとっては内なる自由こそがこの「騙し絵の世界」のなかで命をかけて勝ち取るに値する唯一のものだ。」
また、
「人生の主たる目的は世界のポリフォニーもそのはかなさも同時に感じる事だと思う。」
旅の中にあって、
肉体の消耗や、突然襲う恐怖、
それまでの考えが一気に無効になる体験、
それらによって、
自分の外側にくっついていたものが、
剥ぎ取られ、空っぽになった時に初めて、
多声を聞き取る事ができる。
それは「幸福のあまり窒息するかと思う瞬間」
であるらしい。
私はこの人の本を読んでいて、
登山家の山野井さんのことを思った。
彼もまた、内なる自由、世界のポリフォニーを、
求めて、登っていたに違いないと、
思っている。
よく聞く言い回しで、
大自然を前にすると、
自分の悩みのちっぽけさわかる、
みたいなのがあるけど、
自分と大自然が対面した状態では、
全然ダメなのだ。
エゴが消滅した先に、
完全無欠の幸福な一体感があるということ。
しかもそれは、
はかないものであるらしい。
今また、網野さんの本に戻ったが、
ここにも次々と出てくる漂泊の民は、
決して気の毒な人たちではない。
内なる自由と引き換えに、
ちっぽけな屋根の下にかじりついている、
我々こそ…