松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「ブーヴィエの世界」読了

ブーヴィエを本文読了。

私は改めて、

この人が本当に好きだなぁと思った。

今回の本には非常に詳しい、

著者の年表が付いていて、

これを読んで彼の謎は少し解けた。

スイスに生まれた白人なのに、

どうしてこうも、

偏見と無縁な人になったのだろう、と言う疑問。

大変なインテリの家系。

父方のお祖父さんの交友関係に、

ヘリオット、タゴールなどの名前、

彼の生家には、トーマス・マン

ユルスナール、ヘッセ、などが訪れたと。

ま、びっくりだ。

とにかく彼の教養の厚みには驚かされる。

気の利いた上品なユーモアのセンスは、

そこらへんからくるのか。

ブーヴィエはズバリ旅人系の作家、

自身が見事な放浪者である。

この志向は、どこからくるのか。

厳しい季節、暑さや寒さ、強風や夜の闇を、

恐れず、ほとんど、

好き好んで選択しているふしがある。笑

確証はないが、多分、

自由への強い願望ではないか。

これが征服欲由来であれば、

目も耳も悪いが鼻だけはきく私は、

即座に嗅ぎつけるから。

 

松島の宿で

「装飾をいっさい排したその部屋の完璧さが私を打ちのめし、私を拒否する。風呂上がりだというのに自分が汚く思えてくるのだ。体毛が濃すぎる、欲望が強すぎる、もしかすると手足が一、ニ本多いのではなかろうか。」

アラン島のバーで、暗い中で写真を撮る。

フェルメールの代わりに私が得たのは、粘液のような、肝硬変のような、輪郭のぼやけたフランシス・ベーコンだった。だがおそらく、その場の精霊のほうは忠実にとらえていた。」