松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

描き続けるしろうと

ルフレッドウォリスの本は、

私の見たあの展覧会をやった人が、

丁寧に書いていて、面白くはあった。

 

ウォリスは、漁師であり船乗りであった。

年取ってから、「かつてそうであった姿」の、

大好きな舟を描き続けた人である。

ナイーブとかプリミティブとか、素朴派、と、

呼ばれる、職業画家ではない人による絵、

というジャンルに分類される。

職業画家かそうでないか、

は、絵の素晴らしさ価値とは関係ない。

著者もウォリスはこの垣根を突破する、

きっかけになった画家であるという、

解釈なのかな。

ウォリスは、ニコ・ピロスマニなどと同じで、

私の理想の人である。

「誰に頼まれるわけでもなく、

生きている限り何かを作り続けるしろうと」

私はウォリスに否応なく親近感を感じる。

ウォリスの絵は、

そっくりに描けているタイプのものではない。

それでも、画面全体を見る時、

その色や配置のバランスの良さは、

上手いとしか、私には言えない。

ウォリスには絶対的に好きな色、

というものがあったし。

彼を最初に「発見」した二人の画家は、

猛烈にウォリスの絵に影響を受ける。

逆にウォリスは彼らから影響を受けない。

一人はその後抽象へ進んだが、

もう一人のクリストファー・ウッドは、

自殺している。

本当の理由は知らないが、

私には自分の才能にがっかりしたせいとしか、

思えないんだが

ウォリスの絵には魅力ある。

 

この本の最初の方に、

彼が船に乗って、

ニューファンドランド沖まで、

タラをとりに行った話が出てくる。

この前読んだ木の本には、

バスクの森で育てられた木で作った船は、

カナダにタラをとりに行ったと。

ウォリスよりだいぶ前の時代。

ヨーロッパ人、どんだけタラが好きなのか!

カナダ沖のタラどんだけ無尽蔵!

私も好きである。

また、先ほど書いた絵描きが、

鉄道自殺したのは、

ソールズベリーであった。

1200年前の生垣が今も残る、

あの修道士カドフェルに出てきた!

何かとしりとりのような読書であった。