松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

木の本、読了

木の本を読み終えた。

頭と心と手、と言う言葉が、

一度ならず出てきた。

著者自身が、頭と心と手を使って、

学んできた人なのだと思う。

こうして身につけたものだけが、

使える知恵として蓄えられる。

台伐り、萌芽更新をキイワードにして、

いろんな国を訪ねる。

そこでたくさんの木々、人々と出会う。

人と木の関わりは大昔から世界中にあり、

それはどちらかだけ得するものではなく、

相互作用でだからこそ持続性のあるものだった。

見たこと聞いたことの受け止め方が、

適切で繊細で深い。

そして書き手としての能力の高さ。

だからどこの話も面白いが、

今も入会地が残るバスク地方の話では、

著者も私もちょっと興奮した。

我々は動けない、

受け身の生き物の代表として、

木を見ているが、

実は生き延びるために木が繰り出す、

あの手この手は、実にアグレッシブで、

これって、動いてるじゃん!

と言う場合さえもある。

以前読んだ、英国貴族の再野生化の本も、

紹介されているし、

宮沢賢治の詩が出てきてびっくりした。

個体とは何か、死とは何か、

私のお得意の細菌の話にも繋がる、

先入観を覆す話もたっぷり。

個別の話については、

また折を見て紹介するかも。

訳も良かった。

 

「樹木の恵みと人間の歴史」

ウィリアム・ブライアント・ローガン著

屋代通子

築地書館