松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

ダニエル・バレンボイムのこと

ダニエル・バレンボイムという音楽家をご存知か?
私はクラシックに甚だ疎いので、
まさに名前を聞いた事があるというレベルであった。
8月号の世界にはこの人の記事があった。
全くびっくりするほどかっこいい人であった。

ピアニストとしての腕前は子どもの時から、
フルトヴェングラーに天才と呼ばれるレベルで、
指揮者としてもマエストロである。
ベルリン国立歌劇場の音楽監督を長く務める。
それに加えて、非常に政治的な活動をしている。
1942年ブエノスアイレスに生まれた、
ロシア系ユダヤ人であり、
その後家族とともにイスラエルに渡る。

彼の(日本人が大嫌いな)「音楽に政治を持ち込む」活動は、
文学者批評家のエドワード・サイードとの友情から始まった。
イードパレスチナ人である。
彼と、やはりユダヤチョムスキーの友情も有名である。
(大江健三郎との交流も)
比較的若くして死んでしまったが、
彼の残したもの、その影響力は非常に大きい。
私はサイードについてよく知らなかったが、
チョムスキーや大江の本に出てくるので、
これはきっとすごい人だなぁと思っていた。

バレンボイムはこのサイードと、
90年初頭にロンドンで出会った、
二人は中東の問題をただ眺めているだけでなく、
人々をつなぐ事を目指そうと意気投合する。
音楽を通して。
イスラエルパレスチナ、シリア、エジプト、
政治的な要因で出会うことのなかった人たちを集め、
管弦楽団を組織する。
最初はドイツが舞台となったが、毎年場所を変えて、
ワークショップをし、コンサートを開く。
しかしイスラエルパレスチナの関係が悪化するなど、
継続は難しかった。
その時スペインから救いの手が差し伸べられる。
これも全く知らなかったが、
スペインのアンダルシア地方は、
中世に、キリスト教イスラム教、ユダヤ教の、
人達が7世紀間にわたって平和的に共存した、
世界でも稀な土地であるらしい。
この地にはそれを記念する「三つの文化財団」
というものがあり、
ここがサイードたちのプロジェクトの重要性を認め、
毎年セビリアで続けたらどうかと提案してくれる。
2003年にはサイードの死という試練があるが、
これも乗り越え、スペイン政府の支援を受け、
2004年に、セビリアに、
バレンボイム・サイード財団」が設立される。

続く。