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松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「土と内臓」さわり

「土と内臓」があまりにもすごくて、まだ途中だが、
また衝撃を受けている。
地質学者と環境計画分野の生物学者である夫婦が、
自宅の庭作りで、
ゴミ同然のほとんどただのものだけを使って、
(スターバックスの捨てたコーヒーかすとか、笑)
5年間で土壌改良を成し遂げ、
目も覚めるような結果を出したことに、
驚いて本を書いたのである。
彼らが引っ越した家の庭は、氷礫土と言われる、
それこそシャベルが曲がるような土壌であった。
これは氷河が後退した時に残された、
氷河の重みで完全に押しつぶされ石ころを含んだ、
カチンカチンの土である。
これでは植物は育たない。
自然の力で少しづつ土が変わるには、
途方もない年月がかかるはずのものである。

ここでは有機物を分解する細菌のちからが、
爆発的に展開しているわけだが、
細菌は目に見えないので、その研究は遅かったし、
ほぼ危険な細菌を殺すことに主眼が置かれた。
しかし、1930年台にはイギリスの農学者である
アルバート・ハワードは伝統的な農業のやり方と、
化学肥料を使った農業を、
インドの実験農園で大規模に比較実験をして、
化学肥料は長期的に見て害ばかりあって、
危険であることを実証していた。
しかし、この人の意見は完全に踏み潰された。
これには同僚の研究者も全員参加した。
化学肥料産業は新興の有力なビジネスチャンスであったから、
伝統的な農法では誰も儲からないからである。
そして戦争がトドメを刺す。
ここで私はほんとにびっくりしたが、
まさに「日本の枯葉剤」で読んだばかりの話がそのまま出てきた。
農薬や化学肥料の工場はそのまま軍需産業に使える。
農芸化学と戦争は非常に強く結びついているのである。
戦争に向かうと、国は国策として化学肥料を奨励し、
補助金まで出して使わせ、化学工場を支援するのである。

この流れが現在まで続いている。
本の中に娘の田んぼの秘密が全て語られている。
細菌がたくさんいる健康な土壌では、
病害虫の被害もほとんど起きないという。
そして、ここに書かれている内容を、
農学部の娘が教えられなかったことの理由もまた、
書かれているわけである。
大学という場所は分野によっては、
広い意味で御用学問をする場所であり、
教師たちはほぼ全員が御用学者とも言えると思う。

私たちは日本にいる限り、
当分危険な医薬品漬けの生活から逃げ出せそうにない。
細菌の力を目の当たりにするこの本を持って電車に乗ったのだが、
地下鉄のエスカレーターのベルトには抗菌のシールが貼られ、
ばあさんの部屋には、
殺菌ティッシュペーパーのでかい容器が置かれている。