松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

薔薇の名前読了

薔薇の名前を読み終えた。

なかなかであった。

宗教では、ざっくり言って、

お金とセックスに関する考え方が問題になる。

聖職者は生殖しない。

愛は、神様に全て捧げるから、

女なんか相手にしない。

しかし地球上の生物の全てが生殖こそを、

目標に生きているというのに、

これはいかなことじゃろう。

人間には自然に反する故に逃れ難い、

難しいことを我慢するのが偉い、

と言う我慢大会的美学があるのか。

しかし、非の打ちどころのない、

神に対する愛であっても、

それに淫してはいけない。

盲信してはいけない。

ホルヘのように狂気のレベルに至る。

偶然によって必然は完結するから、

必然のみを追い求めても答えは得られない。

ウィリアムは、たどり着いたが、

彼の推理が正しかったからではなかった。

と言うことらしい。

時に、つい最近、世界経済フォーラムが、

AIで新しくもっといい聖書を作る、

なんてニュースもみたが、

ハラリやシュワブのやろうとする事こそ、

ホルヘの恐れる全てのキリスト教徒の恐れる、

反キリスト、ではないか。

 

最後の河島氏による解説で、

色々と理解が助けられた。

私はエーコ記号論については、

全くよくわかっていなかったから。

それよりも、この本がイタリアで出た直後、

河島氏はトリノにいた。

パヴェーゼの自殺したホテルの部屋に、

滞在していたと。

私はこれを昔読んでいたのだが、

改めてがびーんとなってしまった。

私が訳者として彼を意識したのは、

パヴェーゼのあのシリーズだったし、

胸が苦しくなるような気分になった。

この思いの強さ。

後継者は見当たらない。