松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「星夜航行」読了

 飯嶋和一氏の本は多分ほとんど読んでいる。
歴史小説だがとても面白い。
著者は非常に細かく史実を調べていて、
今度のこの本は特にすごい。
巻頭に地図のある本はすごく好きだが、
この本には異様に細かい地図が出ている。
この地名は全て本文中に出てくると言うこと。
人の名前、日付、場所が全部細かく出てくる。
話の筋を早く追いたい読者には、
ちょっとやりすぎと思えるかもしれない。

秀吉の朝鮮出兵がテーマである。
誰もが歴史の教科書で知っている事だが、
六年の間に二度派兵があり、
朝鮮、中国(当時の明)の軍と秀吉の軍との、
壮絶な戦いであった。
朝鮮の国土は蹂躙され、日本は労働力を奪われ、
米は持って行かれ、ほとんど飢餓状態に。
秀吉の愚かな夢のような野望の結果である。
おだてて焚きつけた坊主がいるわけだが…

細かい描写があるからこそ納得できることも多い。
途中に最初のキリシタンの処刑が出てくる。
後の西坂の26聖人である。
キリシタン関係の本では必ず出てくる、
イスパニア船サン・フェリーぺ号の件も、
タイミングの悪さの極みであったことがよくわかる。
ポルトガルイスパニアの覇権争いが、
イエズス会フランシスコ会の対立となり、
あのイタリア人のイエズス会士あるがん様が、
執拗にフランシスコ会を妨害した話も!
どんな事実も光の当て方で、
いかようにも読めるし、実際物事には、
多様な面があるわけである。
この26人にイエズス会の人も含まれるため、
曖昧になっているが、
これはフランシスコ会に対する迫害である。
なぜか現場は混乱してこう言うことになった。

日本は戦国時代で戦に明け暮れていたせいで、
結構戦争がうまかった。
鉄砲の普及も日本が早く、
朝鮮、明の軍隊よりも有利に進んだ。
明の軍隊は数は多いが広い大陸の騎馬戦の経験しかなく、
私が秀吉軍をやっつけろ!と応援していたのに、
全然勝てない。
そもそもこの大国には、
朝鮮や日本を軽く見ると言う「奢り」があり、
奢りの負のパワーはすごいものだと思った。
奢りが先にあると、ちょっとやられると、
激しく動揺して逃げることしか思いつかなくなるらしい。
なるほどなぁである。