松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

やつらを喋りたおせ!

少し前、TLに藤本和子の名前が出てきて、

あー懐かしい名前と嬉しく思った。
私はごく若い時たまたま和子氏と少しだけ関わりがあった。
そしてなかなかイカす女性のお手本だなぁと、
深く感じていたのである。
ブローディガンの翻訳で有名だが、
本人の著書もたくさんある。
まそんなんで久しぶりに図書室にあるだけの本で、
個人的に藤本和子祭を開催した。
「塩を喰う女たち」「ブルースだってただの唄」「砂漠の教室」
訳書で「やつらを喋りたおせ!レニー・ブルース自伝」
最後の本は自分で買ったものではないかもしれない。
1977年の本で今時珍しい、
小さい文字でぎっしり入っている本。
昔はこんくらいの字の本もあったんだなぁ。
どうしてどんどん大きくなったんだろう、
古い文庫本なんかもかなり小さいよね。

まそれはさておき、レニー・ブルースアメリカの芸人、
一人で喋りたおす話芸で、
内容は権力や既成概念をおちょくり諷刺するもの。
観客は笑いながら冷水を浴びせられるという、
タイプのものである。
権力はこれを危険とみなし、
大昔から現在まで常に繰り返されてきたように、
歯向かうものはこうしてやるとばかりの弾圧が始まる
度重なる逮捕、延々と続く裁判、捏造される証拠、デマ。
出演する劇場にも圧力はかかり、
もはや舞台にも立てなくなってしまう。
80余名の有名人が、レニー・ブルースのために、
抗議文に署名した話が出てくる。
外人の私も知ってる有名人ばかり、錚々たる顔ぶれである。
ジェームズ・ボールドウィン、ソール・ペロー、
スーザン・ソンタク、アレン・ギンズバーク、
まだまだ続くけど。
自らの生ぬるさの免罪符として、
サインした人も居ただろうか。
この自伝を書いて程なくブルースは死んだ。
死の真相は不明である。

とにかく驚くべきはレニー・ブルースの並外れた勇気。
私は人の人生の有り様の違いを作る、
最も大きな要素は勇気の量ではないかと思う。
勇気は大事。
勇気を持ちたいと思うにも、
少し勇気がいるかもしれないが。