松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「世界」から、枯葉剤の話最終回

枯葉剤の話はやはり最後まで書いておかなくちゃと思うので、
最終回を書きます。

1971年にベトナムでの散布が中止されると、
林野庁も使用中止を指示する。
毒性を指摘された林野庁長官は、
「催奇性への疑問がある」と明言している!
そして残りの薬剤を国有林内に埋めるよう通達した。
この時期に国内の野生生物の生息環境が、
激変したことが報告されている。

国内で撒かれた枯葉剤は、
塩素酸ソーダ(枯れ葉剤生成の副産物)5280トン、
245T(枯葉剤)570トン。
現在も眠っているのは、粒剤2万5062キロ、
乳剤2132リットルである。

埋設場所は17道県54カ所に及ぶ。
この取材に当たって、林野庁に埋設場所の公表を求めたが、
詳細な場所は教えられないと。
原田さんと著者は様々なつてを頼って、
幾つかの埋設場所を突き止め、訪れる。
地元自治体によっては、記事にされると困るというところや、
何も知らないというところも!
しかし、現場によっては、当時を知る退職した職員が、
記憶を辿って同行したこともあった。
本の森林管理局ではこの前の地震の時、
現場を確認に回ったという。
そういう自治体もあった。
宮崎の報告書では枯れ葉剤散布に従事した職員10人のうち、
肝臓ガン、肝臓機能障害、肺がんで死亡した人が、
7人と言う記述もあった。
埋設の基準は毒物劇薬の管理方法に準じて通達されたわけだが、
そのやり方は守られていない所も多そうである。
水源地のそばもあれば、同行した化学に詳しい原田さんが、
「匂いがする」と漏れていることを裏付ける発言もある。
あの屋久島にも埋設されているらしい…

日本の行政のこういう姿は今に始まった事ではないのだ。
毒物と知りつつ、自国の空にヘリコプターで、
枯葉剤を撒いたのである。
放射性物質が拡散しようが、
市場の敷地にシアンが出ようがヒ素が出ようが、
知ったことではないというのは、
我が国の伝統であるらしい。

国産の枯葉剤があったこと、それが撒かれたこと、
今もその残りが埋められていること、
私はどれも全く知らなかった。
そして誰にも知られず、ひっそり死んでいった、
動物植物が多量にいただろうことを思うと、
心が暗くなる。

まごまごしているうちに、次の「世界」が出ちゃったので、
この話はこれでおしまいにします。