松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

小説の出だし

小説家はみんな、

最初の書き出しをどうするかで、
かなり悩むと思う。
それはやはり凄く大事だから。
みんなそうかもしれないけど、
私の場合、出だしの文章が、
ビジュアルに目の奥に刻み込まれると、
そのイメージは簡単に修正出来ない。
ベルリンに一人死す」の主人公の容貌が、
あまりにくっきり見えていたので、
映画を見に行って、絶句してしまった。
勝手に作ってしまう場合もあるが、
やはり文の中に幾らかのヒントがあるから。

リンさんの場合、
最初の船のシーンで、
リンさんと小さい子が見えてしまったので、
この子は実は人形だったんだけど!
どうしても赤ちゃんのはずと思ってしまう。
生後4週間なんて書いてるし。
バルクさんに初めて会った時、
彼ははっきり、可愛いお人形をお持ちだね、
と言ったと書かれているのに、
レトリックではと疑う。笑
途中からさすがの私も諦めたのだが…
人間は一人ぼっちでは弱い。
この子のためと思えば、生きる力も湧く。
リンさんの可愛い孫娘サン・ディウは、
その両親と共に死んでしまったのだろう。
人形を子どもに見立てるというのは、
ま、頭がおかしい、
と思われる十分な証拠になるだろうが、
リンさんはお人形を孫娘の代わりにして、
なんとか生き延びようとした。
合理的で賢明な選択だったかもしれない。
それしかなかったに違いない。
小説の最後でも、
リンさんとサン・ディウは、
とても美しい二人である。
やはり最後も大事ね。笑