松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

再読「すべての見えない光」

ようやく本を読み終えた。

たまにずっと読んでいたいから、
終わりにならない方がいい、と、
思う本があるが、これがそんな本だ。

それぞれドイツとフランスに、
生まれた二人が、戦争の最中に、
出会い、すれ違う話なのだが、
二人を繋ぐのはラジオ、
この本の本当の主人公はラジオだ。
ヴェルナーという少年は、
炭鉱の町で事故で親を亡くし、
妹と2人孤児院で育つ。
彼は生まれながらの科学者で、
ゴミ捨て場で拾ったラジオを、
ゴミの山の部品を使って直す。
妹と2人このラジオにかじりついて、
世界中の電波を拾う。
やがて戦争が始まり、
ラジオ修理の才能を認められ、
炭鉱労働者になるはずが、
やがてパルチザンのノラ放送局を、
見つけて潰す任務をおび戦場を駆け巡る。
そしてサン・マロで、
妹のユッタと夢中で聞いた、
あの声をキャッチする。
目の見えない少女マリー=ロールの、
おじさんの声。

出てくる人々がそれぞれに魅力的で、
細部が静かで美しい。
再読では先を急がずゆっくりと、
それをたのしむことができる。
誰にでもお勧めできる本です。

「すべての見えない光」
アンソニー・ドーア著 藤井光訳
新潮社クレストブックス