松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

米澤弘安日記再読

再読シリーズはまだまだ続いて、

次は、米澤弘安日記にかかります。
金沢の一人の職人が書き残した日記を、
読み解いた本である。
姉の知り合いが書いたものであり、
金沢が舞台ということもあり、
非常に面白く読んだ。
その時もだいぶ紹介したので、
重複するところもあると思いますが。

明治から昭和まで生きた人で、
加賀象嵌と言われる金属加工の職人の、
18歳から始まる日記。
そこには意外にも、
豊かな市民の日常生活があった!
昔は楽しみが少なかった云々、
と言う言い方を良く現代人はするが、
そう思いたいだけじゃなかろうか。
この本に出てくるお楽しみ行事を見ても、
大きめのイベントだけでも、
月に一回ではすまない。
次から次へとお楽しみめじろおし。
古くからの年中行事、
お正月の挨拶回りや、墓参り、
こういうのも、途中に親戚の家で、
御馳走を食べる、を含む。
天然自然を鑑賞系では、菊や杜若も。
蓬摘みや、かき餅吊るしや、
食べ物に関する行事もある。
あと商業ベースのイベントでは、
お正月の初売りの飾り物見物。
これすごい。真夜中に見に行くんだよ!
あと地元神社仏閣系のお祭り、
それに職人独自のイベント、
この人なら鞴ふいご祭。
この他に、謡とお茶を習っていて、
このお稽古がかなり頻繁、
もちろん仕事を終えた夜である。
親戚に有名な狂言師がいて、
そこに小舞を習いに行ったりもしている。
そこらに名人がうじゃうじゃいる感じ。
おさらい会やお茶会、
友達の出る発表を見たり、
友達もそれぞれ鼓だの笛だのを習っている。
当然仲間内のジャムセッションもある。
名人の奉納の見物にいったり、
この手のイベントが呆れるほど頻繁にある。
お茶に関しては仕事とも関係がある。
茶釜や火箸など金属はお茶道具にも使われる。
漆ものも持ち手などに金属象嵌があったり。
とにかく藩のお抱えと半お抱えの、
能楽師狂言師囃子方茶道師範などが、
何百人もいたらしいから。
お殿様だけでなく上級の武士のお宅でも、
お茶の先生を指南役として、
雇っていたりもしたらしいから、
お抱えの人数の合計は、
かなりのものだったようだ。
お抱え職人もたくさんいたらしく、
この人のお爺さんもそうだった。
藩が無くなった時に、
無職になった宗家クラスは東京に行ったが、
弟子筋はたくさん残ったわけです。
能舞台が残っているというのもある。
だから現在も楽しみでやっている人は、
かなり多いし、公演もよくある。
(姉は折しも萬斎の三番叟見にに行く、
と言ってた。)羨ましいすぎる。
この芸能分野の趣味というのが、
日常生活にすっぽり入っていて、
風呂から帰って弟と将棋をさしてから、
二人で謡をならんでやって、
あー楽しかったー!寝るかという感じ。
これらに加えて新しくできた、
夜もやってる図書館にいくは、
映画は見るは、で…
今時ここまでリア充のお兄さんがいるとは、
とても思えないのである。