松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

松下竜一の仕事

「怒りていう、逃亡には非ず」 を読みました。 泉水博と言う現在服役中の人の話。 ダッカ人質事件で赤軍から交換条件として、 解放を要求され、超法規的に、 当時刑事事件で収監されていた刑務所から出て、 日本赤軍に合流した人である。 この本は最近私の読書友達になった、 Y田さんから教えてもらった。 私はもともと刑務所などの拘束施設が気になって、 いろいろ読んだりしていたが、 今世界で連載もしている、 坂上香さんのプリズン・サークルについてメールした時、 返信で話に出た本である。 この泉水さんと言う人は本当に数奇な運命を辿った人だ。 全く政治的背景もなかったのに、 刑務所内で病気になった人を助けるために、 捨て身の抗議をしたと言うそのニュースが、 赤軍に伝わったことが人選に繋がった。 飛行機の乗客を解放するためと言う信念で要求に応じた。 事前に全くお互いを知らないのに、 合流した革命家たちと次第に気持ちを通わせていく。 人々の印象は違うと思うが、 革命を目指す人達は元々、 権力を持たない人の味方になろうと言う気持ちを持った人達で、 時代遅れなほど優しい一面がある。 泉水さんを仲間としてリスペクトしている様子が、 うかがわれる。 この本には、尊敬する弁護士安田さんや、 以前獄中歌集を読んだ大道寺将司氏や、 すっかり私をげんなりさせた広河さんなど、 いろいろ出てくる。 人質事件の全容が知れてよかったし、 転び公防の本物も出てきて、いろいろ興味深かった。 検察や警察や刑務所、メディアの実態は確かに酷いが、 もしかして今の方が良くないかも知れない。 現在死刑を執行する権限のある法務大臣が、 壊れていると話題の彼女である。 実に恐ろしい国である。 この「やま」の本の紹介記事で偶然出会ったのに、 Y田さんとは本の好みが妙にあう。 あまりないことなのでとても著嬉しい。 

松下竜一著 河出書房新社