松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「英国貴族領地を野生に戻す」

「英国貴族領地を野生に戻す」は完璧に面白かった。
予想を超えた内容の充実。
私は著者を軽く見ていたわけではないが、
この領主の奥さんは凄かった。
関係する多くの分野をきちんと押さえ、
(あらゆる事がつながっている)
その分野の研究をよく勉強しているし、
どれも情報が新しい。
先行する再野生化の取り組みの現場を、
実際いくつも見ている。
その上で、当事者ならではの近隣の猛反発などの、
実話もなるほどなぁと思うものばかり。

イギリスの環境破壊状況は想像よりひどい。
生物種の失われ方が半端ない。
島国と言う意味で日本も似ているが、
種の逃げ場がない。
動物愛護の先進国という印象があったが、
流石に産業革命の国だけあって、
優先順位と言うものがきっちり、
人間、経済、などになっているという事か。
日本人とイギリス人意外に似ているかもと思ったのは、
再野生化で一切人の手を加えないと言うことについて、
だらしない、許しがたい怠け者、不愉快だ、
という感情を持つ人が多いという事。
雑草は引き抜く事こそ正しいと信じている、
勤勉で真面目な農民たち。
あと政府の動かぬ事岩のごとし!
科学者と言われる人々の頑迷で保守的な事、
驚くばかり!!
キーになる動物の投入で、
目のさめるような変化がたちまち起きる有様は、
素晴らしく面白いです。
この前に読んだマツタケとも深く関係していて、
生き物たちの共生関係の妙には驚くばかり。
今回の本は訳文も文句ないので、
正月の準備とこんちさんをやりつつ一気に読んだ。
超オススメだよ。