松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

蛸の話2

蛸の本は意外に難しくて、まだ途中だが、
一回読んだだけではよく理解できない部分がある。
でも面白いしいろいろ考えさせられる。
本当に不思議な生き物である。
蛸は固有の形と色を持たない珍しい生き物なので、
個体識別が非常に難しい。
著者は彼らの表現者としての個性で名前をつけている。
マチスカンディンスキーブランクーシなど。
それほどまでに、彼らは無限の芸術的表現力を持っていて、
体の表面をスクリーンのように使って、
刻々変わる美しい色のヴァリエーションを見せたり、
ディスプレーと呼ばれる、特別な体形の変化を見せる。
貝のような殻を捨て、骨までも捨てた蛸は、
被捕食者としては甚だ弱い立場にある。
保護色を身につけるために生まれた、
色の自在な変化であるが、そういう場面でなくても、
捕食者や他の蛸がいない時も、披露される。
独演会という状況になる。
要するにそれがどうした、という感じなのである。
蛸と比べる生き物としてヒヒが出てくる。
ヒヒは複雑な社会性を持っているが、
鳴き声のパターンは3種類しか持たない。
ヒヒに関してはかつて
「サルなりに思い出す事など」という本を読んだが、
厳格な階級制のある社会で、
低位の母親から生まれた子どもは、
一生惨めな立場に置かれる。
本当に読んでいて気の毒なくらい厳しい社会である。
表現力過多の蛸とめっちゃ貧弱なヒヒ。
私は蛸にちょっと似ているような気がする。
表現したいという欲求だけがあって、
それがどうした、という感じ。