松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

入会地

赤坂さんは福島と水俣を並べて語っているが、
その中で初めて知ったことがある。
福島の原発のある場所は、元々は入会地で、
その後塩田になった場所を東電が買い占めたものであると。
水俣の窒素の工場も塩田に立ったものである。

入会地というのは地元のコミュニティの共有財産で、
山であれば家を建てる材木、燃料にする薪、
肥料に使う落ち葉などを皆に平等に供給する。
川沿いの土地なら茅など屋根を葺く材料を取る。
塩もまた必需品であろう。
昔は公共サービスなどなかったが、
こういうシステムがそれに代わる役目をしていた。
そういう場所は共有財産であるから、
個人が所有していなかった。
そこが狙われたのである。
そう考えると近代というのは、
民間企業が公共財産を奪い取って、
太ってきたものであり、
それはまさに今も続いているということだ。

苦界浄土を読むと、
不知火の海でいる分だけの漁をする人達にとっては、
海自体が入会地のような役目をしている。
誰もに開かれている豊かな海で、食べる分をとって、
感謝しつつ慎ましく生きてきた人たちがいた。
そういうことができたから生きていけたのである。
生存に直結した水までが私企業に買われ、
現在の都会生活者には、誰にも平等に与えられる、
公共の財産というものの恩恵がない。
どんどん無くなっていく。