松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「モンテレッジョ小さな村の旅する本屋の物語」

なにしろ本の話なので、私にはもちろん面白かった。
本を売り歩く行商の人たちの事だが、
最初は暦や聖句のようなものを売り歩いていたわけだから、
日本にもほとんど同じような人たちはいた。
ただし村ごと世襲でこの職業を担ってきた事、
今もその子孫たちが各地で本屋さんをやっている事、
この歴史を誇りに思い、
出版界に「露天商大賞」という賞を作り、
権威を獲得している事などが素晴らしく、
面白い事であった。
著者の内田洋子さんは、
イタリアに関する本をたくさん書いておられるから、
私もいくつか読んでいるが、この本は、
本人の面白がり方、真剣な好奇心がとりわけ強く、
その分インパクトのある本になっている。
何より登場するモンテレッジョの人達が、
それぞれに大変素敵である。
こういう人がまだいるイタリアはいい国だなぁ。
すぐに読める本だが、印刷機の歴史や、
ユダヤ人の歴史などチラチラと重要な細部もでてくるし、
行商に出なかった、村に残って村を支えた男の事も、
ちゃんと拾って書かれているところなど、
心の行き届いた気持ちのいい本である。

モンテレッジョは山に囲まれた小さな町であるが、
周辺の森は全て栗の木であるという。
栗というのは能登の遺跡の巨大な木の遺構の材料である。
意外に世界中で繁栄していた植物なのか。
耕地のない山の中なので、この栗の実からとる粉で、
作ったニョッキが出てくるが、
ものすごく食べてみたい。
私は栗が好物。