松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「ふたり」読了

今読んでいる本でびっくりしたこと。
チッソを相手に訴訟を起こした患者達を、
支援するための石牟礼さん達は
「告発する会」を立ち上げる。
渡邉京三と高校教師の本田啓吉が実務を担当するが、
ほんの数人の最初のメンバーにびっくりしたわけである。
高校教員1人、NHKに勤務するものが3人、
熊本日日新聞が1人、毎日新聞1人、熊本県庁が1人、
地評事務局が1人である。
1969年のことである。
現在の状況と比べるとありえないメンバーである。
国と大企業を向こうに回して裁判をする、
水俣の患者さんを積極的に支援する会に、
実名で参加するNHk職員がいた。
また彼らは厚生省前で座り込みを始めるが、
彼らのメッセージに即反応して、
厚生省の職員の中から、
連帯のビラを作る人たちが出てくる。
政権に誠心誠意お仕えしている今日の官僚では、
考えられない。
日本は変わった。
国と企業のやる事は、今も昔も全く一緒だが、
国民が大きく変わった。
そして国民を変えるのに功績があったのは、
NHKを筆頭に大手メディアである。
両論併記が中立的で正しいという、
価値観を若者に植え付けながら、
もっと積極的にプロパガンダを展開してきた。
私は何年も前にそれを実感した。
真面目なドキュメンタリー番組の中で、
中国のについて悪意に満ちた説明を滑り込ませる。
真面目な番組だからこそ、
人はまさか嘘ではないだろうと思う。
しかし、嘘なのであった。
最近では、北朝鮮の選手のインタビューまで、
言っていないことを字幕で載せて、
悪意を煽るようなところまで来ている。
こういう事の積み重ねで、
国民の感情は変わっていくのである。
知っていたけど、寂しいものである。