松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「渋江抽斎」

森鴎外の「渋江抽斎」を読んでいる。
この抽斎さんは江戸時代の終わり頃の、
お医者さんで武士である。
幅広い趣味と学識を持ったインテリで、
真面目な勉強家であったらしい。
鷗外は古い書物を集めている時に、
この人の蔵書であったらしいたくさんの本に出会って、
興味を持ち調べ始めたのである。
これは評伝と言えるのかよくわからんが、
何年に誰それに教えを受ける。
その時師は何歳で抽斎のいくつ年上、なんていうことが、
時系列でだらだら続くので、
最初は大概退屈な本じゃなぁと思ったが、
意外や段々面白くなる。
どんどん奥さんが死んで次ぎ次と再婚し、
どんどん子が生まれる。
武鑑という武士の人物図鑑のようなものがあって、
登場人物はどこの殿様系の誰の息子、娘であるという情報も、
欠かさず出てくる。
この抽斎という人も大概面白いが、
イカれた趣味のお友達や、放蕩を尽くす息子や、
いやはや現代の日本に比べて人々の、
個性的なことは、呆れるばかりである。
レベルが違う。
またイカれているからと言って放り出すのかと思えば、
その才気を買って援助したり、
身寄りのないばあさんや、志のある若者など、
何人もの食客を養っている。
このなんとも言えない寛容さが衝撃的である。
江戸時代という時代のイメージが少し変わる。
武士という種族のイメージも。

私の爺さんの家は武士で医者であったというから、
こんな風だったのかしら。
とにかく現代の日本は超絶不寛容である。
かつ似たり寄ったりの小者の大集団である。
多分我が国の歴史始まって以来の酷さではないか。
消防士が制服でうどんを食べたら何がいかんのか。
おまいらたいがいうっせーっちゅうの!