松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「日本の枯葉剤」2

原田和明氏は、著者略歴によると九州大分県の生まれ。

公害が続出する九州で育ち、環境問題に関心を持つ。
化学会社に在籍しながら、生産者側から公害を見つめ直す、
というスタンスでこの本を書かれました。

確かに化学の専門家ならではの記述も多く、
かつわかりやすい。
枯葉剤だけではなく、様々な毒性の強い化学物質、
兵器として作られた物が出てきますが、
例えば、この物質は常温で気化するので、
瓶に詰める事は出来ない、したがって嘘である、
というように。

国会の議事録や、新聞を丹念に読み込んで、
アメリカの嘘、日本の嘘を暴いていきますが、
国会の場面でもっとも活躍するのが、
当時の社会党の議員、楢崎弥之助氏です。
ベトナム戦争の前後は私は子どもでしたが、
楢崎弥之助の名前は本当によく聞いたし、
新聞などでも見た記憶があります。
政府や官僚ののらりくらりの答弁は、
今も同様ですが、当時と比べてもっとも違うのは、
楢崎弥之助のような鋭い強い野党議員が少ない事。
昔は公明党も確かに野党として平和の党として、
機能していたことも伺えます。
また新聞の質の低下は甚だしい。
昔はずっとメディアの質も高かった。
新聞が大きく取り上げて、事態が動くこともあった。

もう一つ、かつては本物の労働組合があった。
今回この本を読んでよくわかったのは、
三井三池炭鉱労働組合が潰された理由です。
ここが枯葉剤を作っていた三井化学の親会社になります。
石炭産業の斜陽化は主たる理由ではありません。
ここの労組は日本一強く実力もあって、
労働環境の維持にすごく役立っていた。
この労組が潰されてからは、
次々に大きな炭鉱事故が起こっている。
彼らが目を光らせていては、
おちおち化学兵器の国内生産は出来ない。
その実力が邪魔であったので、徹底的に潰されたのです。
そして現在の連合のようなものが労働組合という、
意味不明の状態になったというわけです。
本物の労組を失ったのは大きいと思う。
長時間労働や低い賃金、現在のブラックと言われる事が、
やりたい放題になったわけだから。
これは企業にとっての決定的勝利だったのかもしれない。