松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「幻のアフリカ納豆を追え!」

アフリカ納豆の続きを少し。

今回の取材先は西アフリカなんですが、
すごくびっくりしたのは、この辺りでは、
我々の食べている米とは別系統で、
実に二千から三千年前、(一説には四千年前に)
栽培化されたグラべリマ稲という米が、
食べられているということ。
あの単子葉類の小さい粒を食べようと、
家畜化した人がここにもいたんですね。
そしてそれに加えて納豆です。
生物で言う収斂進化みたいな感じで、
遠いアフリカでも納豆ご飯を食べているなんて!
アフリカの人はオクラとかぬるぬるネバネバの野菜が大好きなので、
こういうものを合わせて食べるそうですが、
卵を入れた納豆かけご飯と、
味も食感もそっくり!と著者は書いている。
ただし納豆の原料となるのは、
パルキアという木の実、近年は大豆でもつくるが、
大豆の納豆はどちらかと言うと安物。
その他にハイビスカスの実、あのバオバブの実からも、
美味しい納豆ができると!
ただし日本のように生のまま食べることは少なく、
塩を入れたり干したり粉末にしたり加工して、
お出汁として調味料として使うことが多い。

一方韓国には、チョングッチャンという納豆があります。
主に納豆汁として食べられています。
南部の全羅道に取材します。
その道中の話で、韓国は集合住宅に住む人が、
人口の半数を超えたと。(日本は2割程度)
都市部に人口が集中して地方が急激に過疎化しているという。
これは経済発展の裏側という事でもある。
先日読んだ労働者の時給の国際比較で、
この20年に、他の国は増加しているのに、
日本だけが9パーセントの下落!
韓国の上昇率はダントツで、実に2.5倍になっている!
世界のソウルの記事を読んでも、
韓国はお金があるなぁという印象でした。

ま、納豆に戻ると、ここでも納豆は大豆を煮て、
藁を入れて納豆菌をつけます。
納豆菌は枯草菌の仲間で、
そこらの葉っぱなんでもについている。
アジア納豆でも羊歯でも作っていたし、
アフリカでは穀物を撞く木の臼に、
ついているもので発酵する話も出てきた。
私がすごく不思議に思ったのは、
ちらっと出てくるメジュの事。
これは味噌や醤油を作る元になるもので、
大豆を煮てレンガのような塊にして乾燥させた後、
藁で縛って軒先にぶら下げる。
そのあと瓶に入れ塩水を注いで発酵させる。
上澄みが醤油、沈んだものが味噌になる。
と言うんだけど、どこにも麹黴を入れていない。
確かに藁に麹菌がつく事はある。
娘の田んぼで稲わらについた麹菌のコロニーの写真を見た。
私が味噌を作るときは麹屋さんで麹を買うが、
麹屋さんはもやし屋さんで麹菌を買っている。
韓国では納豆菌も麹菌も、売られていないみたい。
要するに天然自然の野良の菌を使って、
一般の人々は発酵食品を作っている。
これがすごいし素晴らしいと思う。
日本は全体的に管理されきっている。

ま、高野さんは面白いので大笑いして読んだ。
気温が30度も40度も違う場所で、
菌たちは元気に日々発酵業務に勤しんでいる。
そしてアフリカでも韓国でも納豆は美味しいだけでなく、
健康に良いと、高評価であった。

「幻のアフリカ納豆を追え!」
高野秀行著  新潮社刊