松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「プリーモ・レーヴィ失われた声の残響」

失われた声の残響をやっと読み終えた。
プリーモ・レーヴィの、著作以外の、
講演での発言やインタビューなどでの受け答えが、
大量に取り上げられている。
彼はアウシュビッツでの体験を書こうと決意し、
そのことによって生き延びた。
彼は著書の中で、
なんの痕跡も残さず死んでいった人たちのことを、
できる限り書こうとしている。
そして書くだけでなく話すことでも、
証人としての務めを果たす事を自分に課していた。
どんな嫌な答えにくい質問にも、誰からの質問にも、
非常に丁寧に誠実に答えている。
それはどう考えても大変な事で、生涯続けた。
アウシュビッツの生還者はもともと少ない。
常に自分は楽観主義者であると、
人間を未来を信頼していると語った。
その彼が自死した理由は、
私は歴史修正主義者の登場であると思う。
フランスでドイツで、
アウシュビッツは無かったという…
命をかけて語り続けた彼の体験が、
無かったことにされる。
セカンドレイプという言葉があるが、
まさに二度殺そうとするかのように。
痛ましい。
歴史修正は許し難いおぞましい行為である。