「みな、やっとの思いで坂をのぼる」1
みな、やっとの思いで、は良い本であった。
水俣病センター想思社の職員である、
永野三智氏の著書であるが、
私はここの事を知らなかった。
知っていれば水俣に行った時に行くべきはここであった。
ホームページなども見てみたが、
水俣の街を案内するツアーに参加できるらしい。
お話を聞きながら案内してもらわないと、
ただひょっこり行っても、
誰もいない静かな田舎町であるだけである。
相思社の運営には石牟礼さんのご主人が関わっておられた。
この弘さんのエピソードが感動的だった。
ここでは水俣病で亡くなった方のお位牌を、
守っているらしいが、(猫たちを含む)
この位牌の字を書いていたのが石牟礼弘氏であった。
どなたかが亡くなられた時に、それを書いてもらうために、
著者が弘さんのところを訪ねた時、
本棚の本を欲しいのがあれば持っていっていいと言われ、
選ぶと、サインをしてあげようと、
石牟礼道子と書く。
弘さんのではないのかと驚くと、
僕のでは価値がないでしょうと笑われたと。
奥さんを陰になってサポートした人と言えば、
石牟礼さんとも関係の深い、
高群逸枝のご主人を思い出す。
九州にあって、男性がこういう生き方をするのは、
逆に大変な事であっただろう。
男も女もやれる事をやりたい事をやれる、
それをとやかく言われない社会がいい。