松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

モンテレッジョの人達

モンテレッジョの村のことを考えると、
コミュニティの様子が実に素晴らしい。
耕地もなくこれといった特産品もなく、
貧しい村だったから、
自給自足的な無銭生活にかなり近い生活だった。
みんなが協力するしかない。

本を売り歩いた人たちは、
村人に見送られて、同じ日に村を出発し、
それぞれが別の街を目指して歩き始めるが、
事前に街の様子や売れ筋の情報を共有した。
露店での販売で、夜は本を入れた箱を抱えて、
売り場となる平台の下で野宿するような厳しい生活を続け、
それができないほど寒くなった冬に、村に帰る。
実に必要経費は本人の食費だけである。
とにかく体が丈夫なのに驚く。
本売りの他に砥石売りもいたんだから。
よりによって重いものをね…

こんな厳しい生活でも子どもたちは、
親父に憧れ、小さい時から本売りを手伝い始める。
貧しい事、生活が厳しいことは、
必ずしも惨めで不幸なことではないんだなぁ。
子どもたちはお父さんかっこいいなぁ、
と思っていたんだから。
やはり誇りを持って真面目に生きる様子は、
輝かしいものなのではないか。
モンテレッジョの本売りは本の買い手の情報を、
細かく集めて来るから、名だたる出版社が、
彼らを頼りにし山の中まで会いに来て、
話を聞いたという。
ベネツィアの書店の主人も私の親もその親も、
モンテレッジョの本の行商人でしたと、
誇らしげに話す。
自分の仕事を、生まれた場所を、
誇りに思えるというのはなんと素晴らしいことか。

モンテレッジョの人達に共通する魅力は、
お金の物語に毒されてないということかもしれない。