松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「休戦」4

彼らはポーランドにあったドイツ軍の収容所から、
ロシア軍によって助け出された訳だが、
ロシアの組織の特徴は、
今風にいうとアバウト、全てが大雑把。
誰に聞いても先の予定はわからず、
実は計画というほどのものは、
そもそも存在しなかったのかもしれないとすら…
それと、おのずから対比的に語られるのは、
ドイツの事である。
完璧な命令系統と、必要以上に厳格に守られる命令。
何事によらず細かく徹底的に実行される。
敗走途中のドイツ兵の略奪の凄さは、
略奪の楽しみあるいは経済的な有用性などの、
理由をどう考えても逸脱していると書かれていた。

以前「世界」で読んだ、
戦争捕虜の生存率についての話を思い出した。
第一次大戦の後、捕虜の扱いに関して、
国際的な取り決めが作られていた。
戦争被害に関して、ロシアは人的被害も大きく、
生き残った者たちも食べる物がそこをついていた。
しかし、ロシア側の捕虜の生存率は、
ドイツを大きく上回っていた。
ドイツ人に生きて捕らえられたロシア兵は、
その後の扱いの悪さ、あるいは放置で多くが死んでいる。
この本の中でも、
ロシアはまさに混乱と窮乏の中にあったが、
軍人民間人を問わずそれぞれのロシア人は、
いい加減ではあっても、
大元の基本的な気持ちが暖かい。
その差は予想以上に大きいのではないか。

現在のドイツの名誉のために付け加えると、
この生存率が出てきた記事は、
ドイツ軍に壊滅的に破壊されたロシアの町での慰霊祭に、
戦後初めて列席し、正式に謝罪したメルケルについて、
書かれた記事だったと思う。去年か一昨年のこと。