松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

雑誌「飛ぶ教室」

飛ぶ教室」という雑誌がある。
ケストナーの本のタイトルから、
名前が取られている児童文学の雑誌である。
私の持っているのは古いもので、
今江祥智さんなどが編集している時代のもの。
宮沢賢治についての記事があるから、
買ったのかもしれない。古本でてにいれたのかなぁ。
よく覚えていない。
すごい豪華な執筆陣でびっくり。
石牟礼さんの子ども向けのお話が出ていた。
「やつせ川」連載だったらしく第一話とある。
相変わらず水俣地方の美しい方言で語られる、
おじいさんと孫娘、お葉の話である。

このおじいさんは川の渡し守である。
何の本か忘れたが、たぶん宮本さんの本、
図書館で読んだシリーズの一冊と思うが、
川で生きる人たちのことを読んで、
大変興味を持った仕事である。
このお話は民俗学の本かと思うほど、
川筋で生きる人たちが少しずつ出てくる。
この子の父は筏師で、川で亡くなった。
また時々、竹細工を作る人たちが現れる。
彼らは河原に小屋掛し、しばらくしたら、
また何処ともなく去って行く。
犬をお供に山の奥で修行をする盲目の山伏。
この犬が常にない吠え方をするので、
見に行ったおじいさんは、
この山伏の最後に立ち会うことになる。
山伏のたった一つの遺品お数珠を、
村の名主からいつの日かこの人の身内が、
たずねあてて来るかもしれないから、
預かっているように頼まれる。
その後川が、すわ鉄砲水かという時に、
おじいさんはお葉に、
先祖の位牌と共にこのお数珠も忘れず持って逃げろという。
こういう預かりものに対する考え方も面白い。

お祖父さんとの草摘みは楽しい。
摘み草をしながら、じいさんは、
川は我々を養ってくれる、
そして、山があるから川が生まれる。
山は人間の祖(おや)さまじゃ、と語る
なかなか味わい深いお話であった。