松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

嫌な国

世界中から信用できない嫌な国の人と、
軽蔑されるのはどんな気分のものか。

ドイツの本を読んでいると、
そういう状況に出くわすことがある。
戦後何年かしてフランスに行く時、
ドイツ人と知れたらどんな目にあうかと、
ビクビクしながら列車に乗る女性が出てきた。
別に何もなかったんだが。
また別の本では住んでいるアメリカで、
彼女に招待されて家を訪問した若い男性が、
彼女のおじいさんがアウシュビッツの生き残りであると、
いう話が出て、凍りつく場面もあった。
何の本か忘れたが、この時の老人は、
かなり辛辣に厳しい話し方をしていたように記憶する。
この男性は戦後の生まれなのだが。
ドイツでは「ベルリンに一人死す」の夫婦のように、
果敢にナチスに抵抗した市民は少数派だったと思う。
良くて見て見ぬ振り、
不本意であっても、職務上や成り行きで、
加担した人たちも多かったのではないか。
表立って抵抗した人は生き残れなかったのだろうし。
平和教育の一環の、
子供たちの聞き取り調査の本を読んだことがあるが、
ユダヤ人への迫害はベルリンなど都市部のことで、
田舎では案外平和なものだったかと思っていたが、
実はそうではなかった話も出てきた。
狭いコミュニティの逃げも隠れもできない状況で、
手のひらを返したようにひどいことが行われた。

いずれにせよドイツ人は戦後、多かれ少なかれ、
自分の国の過去に苦しんだのだろう。
だからこそ徹底して過去と向き合う平和教育が、
連続的になされてきたし、法整備にしろ何にしろ、
もう二度とやらないという姿勢を世界に見せる必要があった。
自分自身の心の平安のためにも。

日本は何もかもうやむやである。
個人的にはあったとしても、
社会全体としての総括が徹底していなかったと思われる。
海に囲まれている事をこれ幸いと。
そして愚かなことを繰り返す。