松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

本と筍

やはり細菌の本は訳文の悪さがどんどん出てきて、
読み進めるのが苦行と化した。
うーん、である。

私は別に名文を望んでいるわけではない。
引っかかったりしないで、
滑らかに読める普通の文章であればいいんだが。
文章力は思考力でもあるので、
理科系の人は文章が下手ということにはならないが、
国民全体の文章力が怪しくなってきている折に、
ある程度の専門知識もあって、
という適任の人が少ないのだろうか。
と言うより、これは編集者の責任でもあって、
こういう仕事が続くとその出版社は買えなくなる。
実は前回のもギリギリセーフの部分もあった。
もうね、日本の学問の底も、
すっかり浅くなってしまったということだろう。

一方辰巳浜子の方は、やはり面白い。
ここまで食べることに手をかける人は、
現在はいないだろう。
プロの料理人ならいるかもしれんが、
この人はあくまでも家庭料理とこだわっている。
暇を持て余している奥さんだってやらない。
手をかけることは、時間があるかないかとは、
半分しか関係がないから。
時間がなければかけられないのは事実だが、
時間があればかけられるとは限らない。
この人の真剣さが好もしい。

昨日はたまたま筍の穂先があった。
酢味噌にするかと思っていたが、
ちょうどこの本に穂先のお澄ましが出てきたので、
わかめを入れて綺麗なお汁にしてみた。
ゆだった状態であとから貰ったものは、
この素晴らしい先っぽがないのである。