松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

ぶえん

娘は以前仕事で行った佐世保で、
死ぬほどうまい刺身を食べた経験があって、
どうしても魚が食べたいと言った。
しかし行きたかったお店が満員で、
希望にそうような魚は食べられなかった。
粘る娘は最終日の夕方に駅の回転寿しはどうじゃと。
これが美味かった。
とにかく五島列島で獲れたやつは、
鮮度が半端なくいい。
ハマチも実にさっぱり爽やかで、
脂ののった部分もしつこくない。
あの大暴れしていたやつかなぁとちょっと思い出したり。
私も魚には少しはうるさい方だが、
完全に合格であった。

帰ってから読みだした本の中で、
緒方さんが言っている魚の食べ方はすごい。
緒方さんは網元の子どもであった。
お刺身というと小皿に醤油を入れて付けて食べるが、
彼らの食べ方は、丼に刺身を入れ上からぐるっと醤油をかけ、
1人で抱え込んで食べるのだそうだ。
水俣では刺身を、「ぶえん」無塩と書く。
緒方さんは子どもの時から、このぶえんが大好きで、
野菜なんどには目もくれず、
魚だけで腹がいっぱいになるほど毎日食べたと。
この食べ方で、魚に毒があれば、
病気にもなるなぁと。
いつも思うけど、
汚染された魚が味がまずかったら良かったのに。
彼らの魚の味覚はすごく良くて、
緒方さんもマグロなんかは生臭くて食べられないと。
苦海浄土にも、東京の人は腐った魚を食べるらしい、
みたいな話も出てきたが、
彼らにしてみれば実際あれは腐りかけの魚なのである。
私の子どもの頃も刺身は、
基本的に日本海で獲れる近海もので、
マグロはあまり食べた記憶がない。
ま、最近は食べるけど、お寿司ならなんでもうれしい、
みたいなのはないね。
私にとって惜しいのはお醤油が甘いの。
瀬戸内海もそうだったけど。
お味噌も甘い。
そこが唯一の問題点であった。