松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

汽水域2

奇人の本に出てきたのですが、
ウミなんとかという名前の虫は、
実はカコウなんとかであると。
要するに汽水域に住んでいるのである。
虫は体が小さい分、表面積が体積の割に大きい。
水気が外に蒸発するのが悩みな訳で、
丈夫で強い外骨格を持っています。
この素材クチクラについても面白い話はいっぱいですけど、
これは置いといて、
塩分濃度の濃い海水では浸透圧の影響で、
やはり水分が出てしまうのです。
奇人の本を読むと、まあまあ、こんなところに!と、
あらゆる自然条件の組み合わせで、
それぞれの虫が棲みわけている。
海岸の砂礫の大きさも重要で、隙間に、
ほんの少しの空気やほんの少しの水、
ほんの少しの餌を溜める。
それが小さい虫が、
次の満ち潮まで生きる分の十分な環境になる。

そして人間の埋め立て、宅地開発、護岸工事、ダム建設、
石灰岩採掘などなどのせい(石灰質がお好みの昆虫もいる)で、
日々ひっそりと絶滅しているのでした。
ついこの前シロサイの最後の一頭が死んだ、
というニュースがありました。
こういう大きな哺乳類はニュースになります。
私は悲しいから詳しく読みませんでしたが、
ツイッターでは、シロサイと一緒に進化してきた、
シロサイのマイクロバイオームの中には、
シロサイの体にしかいない種類が幾つかあり、
これらの細菌も絶滅したと書いている人がいました。
ちっぽけな虫と人間とでは人間が大事だろうと、
誰もが言うけど、
虫がいなくなれば細菌もいなくなり、
これを餌にしていた鳥がいなくなり、
というふうに繋がっている。
小さい虫や魚のために開発の時にほんの一部でも、
住める環境を残してやる事は、
さほど難しいことではないのに、
とにかく日本人はそれをしないようです。
根こそぎ。
生物の本は悲しい話に満ちているよ。

また汽水域では、潮の満ち引きで川と混ざり、
海中のちいさいけどたっぷりの栄養素を、
浜に打ち上げたりしています
この潮の満干は月と関係がある。
春の城に出てくる海人たちは、
月を見て様々な判断をします。
人のお産も産婆さんは月を見て準備をしたと言います。
月というのもなかなか隅に置けないやつです。