松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

展覧会はしご

上野の科学博物館の熊楠展と、
恵比寿の写真美術館のユージンスミスを、
連続で見てきた。

熊楠みたいな突っ込みどころの多い人を、
どういう風に見せるかは、難しいところだ。
今回は粘菌とか民俗学とか自然保護とかいうよりも、
知識のアーカイブぶりに焦点が合っていたのかな。
それはそれで面白いし凄いんだけど、
一人の人の頭の中に全部詰まっているというところが、
ポイントで、それが大事なんだと私は思っている。
検索かけて何がヒットするかでなくて、
多様なジャンルの膨大な知識なんだけど、
あらかじめ全部本人がわかっていると言うところが、
他の追従を許さないところだし、
今はいないタイプ。
それが生きて使える知識なら、あればあるほどいい。
知識がなければ、問題がそこにあっても見えないから。

展示としては以前見た南紀の熊楠顕彰館が、
面白かったように思った。
(あそこから持ってきているものも多そうだし、)
なんか古臭い所だったけど、
おもちゃ箱みたいな楽しさがあった。
大阪の南蛮美術館なんかもそうだけど
コンセプチュアルでもなんでもないけど、
妙に楽しい場所だった。
ああいう味も意外や捨てがたい。

ユージーン・スミスはかなり大掛かりな回顧展で、
初期から晩年まで多数の写真があった。
とても良かった。
どちらかと言うとこっちの方が混んでいた。
写真家のお手本のような人やね。
表現としても美しく力強いし、考え方が明確。
映画を見るようにシリーズの幾つかの写真を見ると、
おおまかな背景が理解できるようにできている。
日本では水俣の写真が有名だが、
従軍カメラマンとして、沖縄でも撮っている。
意外に日立の一連の写真が印象に残った。
かつての日本の企業の真面目さ、真剣さが見て取れた。
皮肉にもこれが今、ガラガラ崩れているんだなぁと。

元気に着物で行ってきたよ。