松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

チャヴ4 終わり

チャヴを読んで、イギリスもやばいなぁ、
政府のやることはどこも同じだなぁと思った。
それでも読後感が割りに良いのは、
イギリスの労働者階級の人たちが、
これほど痛めつけられているにもかかわらず、
まだ踏ん張っていること。
反移民を煽る極右になだれ込むほどのこともない。
もともと差別は中上流階級の得意技で、
労働者達は昔から、様々な出自の人々と、
助け合って混じり合って働いていたのだから。
それに引き換え中流の金持ち達の醜さが際立つ。
自分たちだけが金持ちでいる状況に、
普通に耐えられる金持ちが、私は嫌いだ。

ケン・ローチの映画「私はダニエルブレイク」を、
思い出す。
(これ見てないのに思い出すのもなんだが、)
持病を抱えた中年労働者が社会保障の窓口で、
理不尽な拒絶、いわゆる水際作戦にあう話で、
苦労しているシングルマザーと知り合い…
という話である。
まさにチャヴな二人の奮闘の話である。
見たかったが見そびれた。
今度機会があったらぜひ見に行きたい。
味方が少ないチャヴだけどケンローチがいるじゃないか。
そして今、彼らにはコービンがいる。
この前の選挙では労働党は盛り返した。
さぁ、これからだ、頑張ろう!

最後にエディトリアルデザインについて。
中身出しがページの最後の行に入っているところがあった。
こういうのは私たちの頃は、まず避けたものだ。
中身出しは次に始まる文章の頭にあるべきである。
また中身出しが本文の一行の文字列の、
センター揃えで入っている。
長い見出しなら、頭が少し下がるくらいだが、
文字数の短いものだと、頭の文字ががくんと下に行く。
これに目が付いていかない。
読み飛ばす誘惑にかられる。
横組みならあり得るし、(目の構造的に)
雑誌のようなスペースにゆとりのある、
眺める感じの紙面ならいいかもしれないが、
単行本サイズの読み物ではどうかなぁと思う。
中身出しはこれから始まる文章の要約を、
先回りして示しながら、本全体の流れを、
コントロールし理解を助ける大事なものである。
中身出しの文言をどうするかは重要だが、
同時にデザインでも大事に考える必要があると思った。

「チャヴ 弱者を敵視する社会」
海と月社
オーウェンジョーンズ著
依田卓巳訳