松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「暗夜行路」

「暗夜行路」読み終えました。
割りに面白く読みましたが、
人間というのは厄介ないきものだなと。
話としては時任謙作という小説家の主人公が、
あれこれ悩む話。
大人になるまで知らされていなかったが、
実は自分は母と祖父の間の子どもであると聞かされる。
実父が自分に対して非常に冷たいこと、
兄弟の中で自分だけが少年の頃から祖父の家で暮らしたこと、
などいろいろな謎が解ける。
と同時に出生にまつわるその事実が、
周囲の身内との関係や、
自分の行動や感じ方にも常にまとわりつき、
大いに悩ましいわけである。
本人には何の罪もないのにね。

人の結婚の形態はどうあるべきかは、
実は正解がないように思う。
世界を見ると一夫多妻のところもあるし、
母系社会では夫婦の単位は割りに気楽な形になる。
日本の歴史を見ても、時代や地方やクラスによって、
様々な形があった。
現在の父系一夫一婦制は、男親の財産が、
正しく血縁の子どもに相続できるという、
経済的な目的にかなったシステムである。
親と子どもの関係もまたこれというものはない。
平安貴族の社会なんて実に親子関係は希薄である。
正解がないにもかかわらず、
その時点の一般的なシステムに人はものすごく左右される。
日本人は同調圧力が云々と良く言われるが、
どこの人も世間の常識から自由になるのは難しい。
多少の幅はあるにしても。
実にややこしいものである。

動物の世界にも様々な結婚形態はあるし、
同性で番うものもいれば、
一夫一婦制をとりながら、
実は別の雄との間に生まれた卵を産む事が、
頻繁な鳥もいる。
ハーレムを形成するような動物では、
ボスになれないオスは、一生独身の場合が多い。
動物もそれなりに苦労なのではあるが、
出生の秘密に悩み苦しみ、
悪くすれば自殺するものもあるというような事はない。
人は人間の作った規則や縛りに、
思い切り影響される生き物である。
美しいと思う景色すら所変わればなのであるから、
悩ましいことである。
隣の国では全く問題にならないことが、
ここでは罰当たりになることもいっぱいある訳だから、
これがたった1つの正解ではないんだよと、
考えるしかないんではないか。
あまり役に立たないかもしれんが…