「これがすべてを変える」9
このイギリス、チチェリーホールでの会議の章には、
二回日本の話が出てくる。
この会議が開かれたのは、2011年。
会議の2週間前に、福島の原発事故が起きている。
会議の開催中もニュースのトップは、
ずっとこれについてであったという。
「それでも、この大惨事に対する自称ジオエンジニアたちの認識は、
原発反対派がこの危機に乗じて、
新規の原発建設を阻止しようとするのではないかと、
心配する程度にすぎなかった。」
地球工学のハイリスクな野望は、何があっても、
止まることができない…
もう一つ。
この計画がどんなにリスクが大きくても、
いったん大規模実験が行われれば、
運用まで時間はかからないだろうことは、
過去の事例からわかっている。
「マンハッタン計画に携わった科学者の多くは、
抑止力としてのみ使われる核爆弾を製造していると思っていたが、
最初の核実験トリニティの成功からひと月とたたないうちに、
広島と長崎に原子爆弾が投下された」
ネガティブな表現に「後ろむき」という言葉がある。
反対語はもちろん前向きである。
進行方向がどんなに間違った方向でも、
前に進むことこそ素晴らしいというのが、
科学技術信仰の信者の特徴です。
進むことが大事で、足踏みもゆるさない。
こういう価値観を、普通の人々も共有している。
時間をかけてじっくり考えるのもダメなのだ。
昨夜からいろいろやばいことが起きていて、
暗い気分になるが、
地球工学の会議で、二酸化硫黄を撒くには、
飛行機か長いホースかという話題で、
盛り上がっているのに比べれば、
戦争なんてずっとリアリティーのある、
ありふれた事といえるのかもしれない。