松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「これがすべてを変える」2

著者のナオミ・クラインは、
精力的に大作を書き続けているが、
ショック・ドクトリンの見返しに出ていた写真を見ると、
爽やかな綺麗なお姉さんという感じである。
非常に若い。
今回の本の執筆中の時点では、
小さな子どもさんがいて、
一緒に絵本を読むシーンが出てくる。
お気に入りの絵本「ヘラジカを見たことある?」
はページの中に隠れているヘラジカを探す絵本である。
75回ぐらい繰り返し読んだ時、(!)
突然、息子はヘラジカを見ることはできないかもしれない、
ということに気づく。
彼女の住むカナダ、アメリカの北部で、
ヘラジカの数は激減している。
オイルサンド開発の行われているアルバータ州では、
仕留めたヘラジカの肉が緑色に変色していた。
オイルサンドの排水に含まれる、
有毒物質に汚染された水を飲んだせいでは、と言われている。

以前「ヘラジカの贈り物」という本を読んだが、
カナダの先住民の中にはほぼヘラジカだけに依存して、
生活してきたひとたちがいる。
現在も彼らには特別に、
ヘラジカをいくらでもとっていいという、
狩猟許可が与えられている。
この本を読んだ段階ではヘラジカはまだ沢山いたのに。

ナオミクラインは、
たぶん世界で最も多くの、
こうした情報を持っている人の一人だろう。
知っていることは辛いことである。
そういう知識こそ、皆が知るべきであるのだが。
多くの人は知ろうとしないという方に流れるが、
知りえた事柄を、その重みに耐えて、
こうして本にして多くの人に知らせてくれる、
彼女は偉大な綺麗なお母さんである。