松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「クラバート」

親切なご婦人にお借りした、
「クラバート」を読了。
これは大変面白かった。
著者のプロいスラーは「大どろぼうフォッツェンプロッツ」
を書いた人である。
クラバートは昔話を基にした長編の物語。

東ドイツポーランドの接するあたりに、
ラウジッツ地方というところがあり、
ヴェント語を話すヴェント人という、
スラブ系の人たちが住んでいる。
この人たちはキリスト教の教化にも負けず、
古い信仰や服装や伝統的な習慣などを、
大切に守ってきた人々で、
いきおい、民話や伝説昔話を豊富に持っている。
その一つがクラバートという少年の伝説である。

夢に導かれて粉挽の職人になったが、
ここは魔法を教える学校でもあった。
親分はいわゆる悪い魔法使いで、
水車小屋の職人たちはこの魔法使いから、
自由になることはできない。
なおかつ一年ごとに誰か一人が謎の死を遂げ、
欠員はまたどこからともなく補充される。
クラバートはこの親分と対決し、
ついに打ち破るのである。
職人は全部で12人いるが、クラバートだけでなく、
その一人一人の人物造形が秀逸である。
昔話は聞いてる分には面白いが、
どっかしら整合性がなかったり、
妙にしり切れとんぼだったりすることがあるが、
これは著者が練りに練って再構築したもので、
完成度がすごく高い。
私はこれは完全に高評価!である。
ヘルベルト・ホルツィングの挿絵が素晴らしい。

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これは1986年の改訂版偕成社
図書館などにあればぜひ読んでみてほしい。