松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

見ること

たまたま、相次いでそういう話が出てきたので、
見るということ観察することについて。

注意深く見ることは実は、深く考えることにつながる。
目の前にあるものをじっくり見ることは、
あるかもしれない実際には無いもの、
あるいは(具体的には目の前にありうる可能性の無い)
抽象的なことにまで考えが及ぶことと、地続きである。
観察はさまざまな思考の基本ではないか。

私が意外に人は観察力が無いという事を感じたのは、
実は獣医師がきっかけである。
人であれ獣であれ、医者の仕事は、
まず患者をよく見る事と思っていたが、
なぜこの違いが認識できない!という経験が堆積している。
すくなくとも、子どものうさぎに次ぎ次に起こった、
謎の多様な不具合に関して、
獣医師の改善に関わった貢献度は、
どう考えても0パーセントである。
私の話はまったく通じなかった。
結局私のマッサージとうさぎの強力な治癒力のおかげで、
まだ完全では無いがほぼ健常になったが。
(先日たまたまインドの、
交通事故で下半身が麻痺した犬に対する治療を見て、
これこれこれなんだ、と思ったものである。)

見続ける事によって観察力は鍛えられ、
ますます見えてくる。
観察にはキリが無いのである。
宮本常一は、
民俗学におけるよく見ることの重要性を語っているが、
昔の漁師がいかに見、また見えていたか、
そこからどういう思考を導いていたか、
という話もしている。
どんなジャンルでも注意深く見ることは、
基本的スキルであると思う。

我々は多くの情報を得られる時代にいるというが、
ほとんどが受け売りのもので、
自分の五感を通して得た情報は、
減っているのでは無いかと思う。
(新古今和歌集の時代の歌詠みの、
ものの見方もハンパないものであった…見て見て見まくる)
我々の周りは無限とも言える、
物と事象がとりまいている。
なんと見がいのある事か!