松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「王のしるし」2

サトクリフの物語の時代は、
古いブリテンにローマの軍隊が駐留している。
だから出てくる人たちのバリエーションがハンパない。
ブリテンの中にも浅黒い黒い髪の小さい人や、
赤毛の大柄の人、それにローマからの多様な人たち。
海の向こうから襲ってくるサクソン人は肌が白く金髪である。
その他に中東方面からの人たちも出てくる。
また、それらの混血。
外見だけでも多種多様である。
シリア人、エジプト人などの言葉も出てくる。

シリアは今大変な目にあっていて、
国民の多くが難民になり、国が崩壊しかかっているが、
この地球上で最も早く文明が芽生えた場所の一つである。
ヨロッパの白人は、自らの文明のルーツを、
ギリシャ、ローマと言いたいわけであるが、
やはりチグリスユーフラテスがあるわけで、
トルコやシリア、エジプトなどは、ローマ帝国の時代も、
立派な学校もある学問の中心であったし、
地中海、シルクロードの要で、
様々な文化、物が集まる場所であった。
そういう場所の人たちは多分知識や最先端のものを持って、
非常に広範囲に移動していたのだろう。

王のしるしの主要な登場人物のシノックは、
ブリテンの古い氏族の母とローマ人の間にできた混血である。
彼の仕事は馬商人。
今でもそうなんだと思うけど、
アラビア馬は早いんで有名で、
皆が欲しがる商品であったらしい。
こういう商人は驚くほど広範囲を移動しながら、
商品である馬と、ついでに馬に積めるほどの綺麗ないいものを、
ちょいと乗せて商売していたらしい。

現在のアングロサクソンが猛威をふるって、
アラブ世界を粉々にする状態に比べると、
いくぶんかは多文化共生的な時代であったかもしれない。
当時も差別や争いはいくらもあったが。