松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「チベットの先生」おまけ

中沢さんが学んだのは、
チベット仏教の中のニンマ派と呼ばれる、
瞑想による修行を大事にする宗派です。
これは他宗派や日本人研究者などから、
その当時から馬鹿にされる傾向がありました。
まぁ、そうだろうなぁと思います。
時間の無駄、的な批判もあった。
それに仏教の思想的体系を書物から学ぶとかのほうが、
上等の感じがする。
しかし、中沢さんの出会った行者の中には、
人から人へ、行為と肉声で伝える、
そして自身の瞑想体験によって、
それを自分のものにするというのが、
一番良いと考える人もいた。

今世の中で一番軽視されているのが、
こう言う考え方ではないかと思います。
合理的にスマートに進まないかもしれないけど、
繰り返すことで自分の体で覚えるということでしか、
成し遂げられないこともある。

ケツン先生は家族とも離れ離れになり、
難民となってブータンを超えて、
インドの難民キャンプに、追われていくことになるが、
そこで生まれて初めて身分証明書をうけとる。
自分が何者であるかこの紙に書いてあると。
先生の、「なんともふしぎな仕組みだなぁと、
私はあきれたり感心したりしたものだ。」
と言う感想が可笑しい。
だって先生はそれまでの人生をかけて、
自分とは何者であるかを探し続けてきたわけだ。
それが、紙一枚に書かれていて、
それだけが信用に足るものであるというのだから。
これは本当に現代社会を象徴しているなぁと思った。
人は何より紙切れをありがたがる。

まそんなわけでおしまい。