「土と内臓」7
大腸の中で人間が自分では消化できないものを、
食べて細菌が作り出す素晴らしい副産物とは何か。
(消化を細菌に丸投げしている動物は、
人間だけじゃないので、そこまで恥じることはない。)
それは単鎖脂肪酸、SCFAと呼ばれている。
これは我々にとって、
栄養であると同時にお薬でもある。
SCFAのうちの三種、酪酸、酢酸、プロピオン酸、
これらは人間の代謝と免疫反応に欠かせない。
そのプロセスは全て解明されてはいないが、
マウスを使った実験などで全体像は明白である。
酪酸は大腸にとどまり、大腸に食べられる。
細胞は基本的に血液を通して栄養を補給しているが、
これは例外的にダイレクトに吸収される。
大腸壁の健全のために、
元気な細胞を維持し、抗菌物質を放出させる。
酢酸とプロピオン酸は血液に溶けて、
肝臓、腎臓、筋肉、脳などに運ばれ、
これらの組織の細胞のエネルギー源となる。
(やってることは多岐に及び超複雑であるが。)
昔の人は、大腸なんて、ウンチの一時預かり所、
ゴミ箱かなんかのように考えていたらしい。
それはとんでもない間違いで、
大腸の中で作られた物質は脳にまで運ばれ、
(みんなが尊敬している脳!)
人の感情のコントロールに関わってさえいるのである。
SCFAを増やし維持することが、
免疫反応や糖尿病ガンなどの現代の病気に、
深い関わりがあることは確実であるとなれば、
我々は大腸の住人を食べ物を通して、
よろこばすべきであろう。
それにはどのような方法があるか。