松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「土と内臓」6

この本は消化管の中で繰り広げられる仕事風景を、
わかりやすく書いてくれているので少し紹介する。

まず、胃、小腸、大腸という名前で呼ばれているが、
大腸は小腸の大きいやつではない。
これらは三つとも機能が全く違う。
「胃は溶解器、小腸は吸収器、大腸は変換器」
と呼んだ方がいいかもしれないと。
胃は強酸性である。
pH7が中性で、数字が小さくなると酸性度が増すが、
胃は1から3の間である。(レモン果汁がだいたい2)
ここに繁殖できるのはピロリ菌くらいである。
(これについては前の「失われゆく」の紹介で書いたが、
これを退治する大ブームが起きたわけだが、
この菌を根絶やしにするのは必ずしも得策ではない。
だってご用もないのに、
みんなが嫌がる強酸性の場所に住み着くって、
わたしが考えても、これなんかあるぞと思う。)
胃がいろいろな食品をドロドロに溶かし、
小腸に落とすと、胆汁や膵液がほとばしりでて、
基本的な分子に分解する作業が始まる。
小腸の中は、ドロドロになった食べ物や飲み物の他に、
我々が分泌する様々な液体が合流して、
川のように流れている場所らしい!
ここで単純糖類、複合糖類、脂肪、たんぱく質に分解され、
小さな分子から吸収されていく。
複雑なものは大腸へと回される。
この単純糖類、複合糖類という分類であるが、
前者は二個か三個の糖つながったもので、
すぐにブドウ糖になる。
後者は数百から数千の糖が繋がっていて、
中心の枝には他の糖、アミノ酸、脂肪などがくっついている
非常に複雑なものである。
例えばセルロースのような多糖類である。
これを分解するのが大腸の細菌のお仕事である。
1mlあたり、胃では10の1乗、
小腸で10の3乗から10の7乗だった細菌の数が、
大腸では10の11乗となる。
(右肩に乗る小さい数字が打てない!あしからず)
大腸の細菌が好きなのははっきり言って多糖類なのである。
これを食物繊維ということもできる。
細菌たちはこれをモリモリ食べ、
素晴らしい副産物を作り出すというケミカルなお仕事にかかる。
強酸性でもなく、濁流に押し流される心配もない大腸は、
落ち着ける環境なのである。