松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

キッド4

そんなんでやっと書類も揃え、
スタートラインに立ったわけだが、
二人は全くもって里親に選ばれる自信はなかった。
この本が書かれたのは1999年のことであり、
当時のアメリカでは同性婚は認められず、
里親になることも、禁止されている州も多かった。

ところが意外にすぐにエージェントからの電話を受け取る。
彼らを選んだのは、20歳のホームレス、メリッサである。
私は本の紹介を幾つか読んだ段階で、
〈ガター・パンク〉という人たちのことが、
妙に気になっていた。
本書を読んで、ほぼ想像通りであり、ダンのかれらについての、
理解の仕方も完全に納得のいくものであった。
少し引用
「車や家、仕事といったアメリカ的価値の主流をなすものを否定しているガター・パンクたちは、人の衛生の主流をなす歯ブラシや石鹸、それにシャンプーも否定している。
中略
彼らは、通りがかりの人々に小銭をねだる。小銭が必要なのは食べ物やビール、ドラッグを買うためで、彼らは正直にそう言う。」

アメリカはあらゆる分野で管理が行き過ぎているし、
衛生観念や消費志向も行きすぎている。
(日本もさほど変わらないが)
だからそれに反発する人たちが出てくるというのは、
全くもって必然である。
ダンは、彼らに小銭を差し出すのは、
自分たちの仕事や罪の意識や共感があるからで、
僕自身少し彼らが羨ましいのだと書いている。
また、ガター・パンクはウッドストックに似ていると。
今から20年後には、ガーダー・パンクジェネレーションの、
文学が生まれ、実はあの頃自分も路上にいたと、
嘘をつくものも現れるのではないか。
ウッドストックに行かなかったものまでが、
行ったと言い張っているように。

なかなかに暖かくも鋭い考察だが、
ブロードウェイの一角の本屋の店員であるテリーは、
万引きしようとするガター・パンクをつまみ出すのが日常で、
彼らにうんざりさせられている。
そして、メリッサは臭いのであった。