松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「凍」

沢木耕太郎の「凍」を読んだ。
すごすぎる登山家夫婦、山野井泰史、妙子の
ヒマラヤのギャチュンカンのアッタクを題材にした、
ノンフィクションである。
非常に面白かった。
沢木耕太郎はいろいろ読んだが、
この人の必要最低限みたいなさっぱりとした文体が、
ドキュメンタリーにぴったりである。
また、山の場面では一緒にいたんじゃないかと思うほどの、
リアリティーで、沢木耕太郎の取材力、理解力、想像力も、
素晴らしい。

彼らは生きて帰ってきたが、
そこで繰り広げられたのは、まさに死闘。
死ななかったのが不思議なくらいである。
二人とも手足の指を凍傷で失う。
妙子さんに至っては残っていた指を全部失い、
両手の指が全部なくなってしまった。
それでも2人は今も登っている!

池澤夏樹が素晴らしい解説を書いている。
この本が(彼らの偉業はすごすぎるにしても、)
こんなに感動的なのは、彼らが自由だからだ。
徹底的に自由に生きる人たちだからだと。

これを読むまで、
山野井さんを知っているという意識はなかったが、
読み進むうちに、ここの部分は読んだぞというのが出てきた。
雑誌か何かで紹介されていて、この本から引用があったらしい。
覚えていたのはさすがに印象的な、
山野井少年のエピソードであった。

とにかく二人とも、会ってみたいような、
魅力的な変わり者である!