松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

「沈黙」読了

遠藤周作の「沈黙」を読み終えた。
昔読んだと思っていたが、読んでなかったかもしれない。
とても面白かった。
もっと暗くて重いかと思っていたが、
そういうことはない。
遠藤周作はなかなかのストーリーテラーで、読ませる。
世の中にはもっと重いしんどい小説は沢山あるから。
しかし、考えさせられる部分は十分いろいろあった。

若桑みどりの「クワトロ・ラガッツィ」を読んでから、
様々なキリシタンの本を読んできた。
日本においてはキリシタンが壮絶な迫害を受けたので、
つい肩を持ちたくなるが、そのイエズス会が南米で、
同じキリストの名において、先住民に何をしたかを私は知っている。

そもそもこれら全ての背景には、
新大陸発見から大航海時代にかけて、
王様とキリスト教と商人がセットになって、
植民地を貪ったそういう時代の流れがあり、
アジアの端っこの日本もこの荒波に巻き込まれたわけである。
しかし彼らが南米で殺した数たるや…

しかし現在も、状況は全く同じと言わざるを得ない。
アメリカは、国と企業とキリスト教がセットになって、
イスラム教徒の国々を蹂躙している。
主導権は大企業になっているが。
結局帝国主義は終わらない。
イスラム教の本を読めば異教徒に対して、
キリスト教よりイスラム教の方がはるかに寛容であると感じる。

人間のやることは本当に変わらない。
狂ったようなナショナリズムは、気をぬくとすぐ蔓延する。
それが役に立つ人たちがいる限り。
人種や宗教などの属性で差別するなという約束は、
いまや世界中で反古にされている。
我が国の現在の状況もまた、気力もなくなるレベル。