松井なつ代のやま

ステンシルのイラストや本の紹介、麹の話、そのたいろいろ。

マル農のひと

真ん中の本は金井真紀さんが取材し、本文と挿絵イラストを書いた道法正徳さんというフリーの農業指導員を、紹介する本である。金井さんは、世界の扉ページに、世界のことわざと言うコーナーを書いていて、これも短い文に挿絵が付いているのだが、いつもいい…

ユダヤ人

去年はプリーモ・レーヴィの著作を、立て続けに読んで、今回はポーランドの小説を読んだこのタイミングで、アウシュビッツ解放75周年ということで、たくさんの記事や生々しい写真が出てきている。ユダヤ人とは何か、ナショナリズムとは何か、そういう事をつ…

「人形」読了

1212ページの長編小説ついに読了。こんな長いもの読みきれるかなぁと思ったが、面白くて小説もやはりいいもんだなぁと思った。訳文が良いのも大きい。去年の翻訳の大賞を取っている。日本で訳出されるものはほとんどが英語で書かれたもの。当然英語の翻訳者…

また再野生化の話

環境保護団体のやっている事と、再野生化が違うところは、これにはこうしたいという理想の形がない。全てお任せである。現在ある保護運動は多かれ少なかれ、この場所のこの状態を維持するとか、ある時期の状態に戻すとか、特定の植物を守るとか、目標とする…

「グロマリン」の話

イギリス貴族の再野生化の本の最後の方に、すごい話が出ている。土壌の話であるがそのなかの菌根菌の話。「グロマリン」という物質は、1996年に発見された。菌根菌が炭素から作る糖タンパク質である。大気中の二酸化炭素が増えると生成量が増える。実にグロ…

「英国貴族領地を野生に戻す」

「英国貴族領地を野生に戻す」は完璧に面白かった。予想を超えた内容の充実。私は著者を軽く見ていたわけではないが、この領主の奥さんは凄かった。関係する多くの分野をきちんと押さえ、(あらゆる事がつながっている)その分野の研究をよく勉強しているし、…

再野生化!の話

注文していた本が届いた。イギリスの貴族がその領地を、農業や酪農を続けても赤字続きなので、全てをやめ野生に近い種の、馬や豚や牛などを放して放っておいたら、どんどん土地が変化し、多くの鳥や昆虫が帰ってきて、絶滅危惧種が、繁殖をはじめたという、…

ローマ法王

ローマ法王の話を読んだ。この人近々日本に来るようだね。彼はとても面白い人です。日本はカトリックの信者は少なめだけど、彼はイエズス会士なので、長崎の隠れ切支丹と原爆のことに、強い興味を持っていて、日本に来たらすぐ長崎を訪れる予定らしい。26聖…

養老先生

本屋で目についたので、養老先生の「ヒトはなぜゴキブリを嫌うか?」を買ってみた。少し古いが講演録で、ゴキブリについての本ではない。手を入れて新書版になって発売の、タイミングだったらしい。私は養老先生が好きだが、理由の1つは、愛煙家であること…

マツタケ

みすずのお便りでこの本を知り、読みたいなぁと思っていた。そしたら姉が買ったというお知らせが来て、しめこのうさぎ、とばかり、彼女が読み終えるのを待つだけであった。いつもだと誰かが本の紹介文を書いているのだが、これに関してはプロローグの一部が…

トビケラ

これは娘に借りた本です。トビケラという虫の巣の写真集で、佐藤卓デザインのかなりカッコつけた高い本。写真を撮っているのは小檜山賢二さんという方で、私が持っているあの驚くべきゾウムシの本を作った人です。この人は通信関係の偉い人なんだけど、動物…

「虫のすみか」

私は毎日気分が良くないわけだが、娘が貸してくれた「虫のすみか」を読んで、中和するように頑張ってみた。私の好きな小松貴先生!の本である。 様々な虫の生活パターンの、驚くべき多様性が、すごすぎる。我々はみなこの地球を舞台に生きているわけだが、使…

日本社会のしくみ

この本は欲しいと思っていたんだが、忘れていた。昨日本屋に寄ったらちょうど目につくところにあったので、そうそうと思って買ってきた。私は社会学者の本をたまに読む。最近2人ばかりクビにしたが、笑小熊さんは引き続き贔屓にしている。以前自分の父親の一…

師匠は熊にかぎる

「昔から地球上に、お前たち生きろと神様から言われて分布しているいきものは、生きていてほしいと思うね。虫一匹だっていなければ人間に困ることだってある。中略だからクマはクマなりの存在価値があって、この世界になくてはならないものだと思うんですよ…

「与謝野晶子歌集」

歯医者さんの帰りに、恐怖の体験を忘れるために、一度入ってみようと思っていた、割に最近できた児童書の古本屋に立ち寄った。全てが子ども向けではなく、店の中に入ると大人の本がかなり多かった。というか児童書は思ったより少なめ。児童書の古本は少ない…

世界7月号より

7月号の世界の特集は「原子力産業の終焉」である。いくつか読んだが、確かに如何ともしがたいオワコン感であった。意外だったのはアメリカの原子力産業の寂れぶり。原発の圧倒的先進国だったはずが、技術的にももはやその面影はない模様。大量の電力消費国と…

「羊飼いの暮らし」2

著者ジェイムズ・リーバンクスの羊たちは、フェルと呼ばれている山に放されている。羊たちは人の世話を受けず自由に自然の中で生活する。山の草を食べて子どもを育てる。途中、毛を刈る時や出産などで何度か山から下ろす。冬場は干し草を羊飼いたちがフェル…

「羊飼いの暮らし」

借りて読んだ「羊飼いの暮らし」が、大変面白かった。イギリスの湖水地方、北のほうの西側、ピーターラビットのポターさんが押しまくった場所で、数千年前とほとんど変わらない方法で、在来種の羊を飼っている人が書いた本である。フェルと呼ばれるなだらか…

コービンの話

コービンの本を読んでいて、あー同じだなぁと思うところがある。コービンが労働党の党首になってから、いっときも休まず、党本部と事務方はコービンの邪魔をし続けていた。そして総選挙になってもそれをやり続ける。反コービン派の議員に手厚く選挙資金を配…

注文していたもう一冊

もう一冊買ったのは、「候補者ジェレミーコービン」 この本の翻訳者の藤澤さんのツイートで、コービンの事は、リアルタイムでワクワクしながら追いかけていたが、それがそっくり立派な一冊の本になっている。これが面白くて止まらない。 残念ながら岩波の本…

五日市憲法

この前の号のビッグイシュー、まだ読んでない記事があった。「五日市憲法」について。名前しか知らなかったが、これは予想以上に凄いものであった。幕末から二十数年の間に日本の各地で、民間人による憲法の草案が実に102も!作られた。その一つである。長く…

「古都の尼寺」

ごくたまにこういうことがある。つい最近読んだ本とその後に読んだ全然別の本が、偶然急に繋がるという事が。この本は先だって、お家を建て替える方から、様々なものと一緒に頂いたものである。しばらく読まずにいたが、このたび手にとってみた。中は半分が…

明月記を読む読了

明月記を読むを読み終えた。はっきりわかったのは、私には和歌を鑑賞するのは無理ってこと。古今集、新古今集の時代の歌は、やはり基礎知識、教養がないと無理や。素朴な万葉集や、和歌が避けた、リアルなものや日常的なもの上品でないものも詠んだ今様、な…

明月記を読むをよむ

上下巻あるしどうしようかなぁと悩んだが、近所の本屋に注文していた本が届いた。本を読むのは久しぶりな感じ。定家の歌をそんなに詳しく知っているわけでもないが、最初の方だけ読んでも、その才能は凄いなぁと思う。10代20代の頃の作品の成熟度には恐れ入…

「江戸庶民風俗絵典」

「江戸庶民風俗絵典」という本をもらった。これに類するものの文庫本サイズのは、2冊持っているが、これが優れているのは、著者の三谷一馬氏の詳細な説明がついているところ。別の冊子になっていて絵をみながら読むことができる。時間があれば眺めているが、…

法然

法然少年は本当に賢かったと見えて、13でお山に入るのですが、先生に私じゃ荷が重い、もっと偉い先生とこ行きなさいと、たらい回しされるほどだったのでした。仏教には中国の偉いお坊さんの書いた本や、それを学んだ日本のお坊さんの書いた本など、沢山の立…

ガザから比叡山

岡真理先生のパレスチナの本を読み始めたが、しんどくて休憩を入れている。割と発言しておられるのでお名前は見かけていたが、著書を読むのは初めてだった。カナファーニーの「太陽の男たち」を読んで、パレスチナ問題に取り組む事になったらしい。私も数年…

再燃気味

室町言葉の記事で、島原半島で印刷されたと書いたが、日葡辞典は長崎で印刷されたらしい。印刷機も迫害のあおりで随分移動している。思い出して「活版印刷人ドラードの生涯」を、出してきて年表を見て確認した。ドラードは日本名がないが、ポルトガルと日本…

文化について

「残響」の中に「今でなければ」の話が出てくるが、その中でドーヴという老パルチザンについて、彼は死なせたくなかったと、プリーモ・レーヴィが言っている。この本は綿密な下調べを経て作り上げた小説で、事実を元に書いているが登場人物は著者の創作であ…

「プリーモ・レーヴィ失われた声の残響」

失われた声の残響をやっと読み終えた。プリーモ・レーヴィの、著作以外の、講演での発言やインタビューなどでの受け答えが、大量に取り上げられている。彼はアウシュビッツでの体験を書こうと決意し、そのことによって生き延びた。彼は著書の中で、なんの痕…